平成16年の年金制度改正にともない、平成19年4月からは、70歳以上の働く高齢者の年金額や、女性の年金の見直しなどが行われています。ここでは、改正の内容と基金の対応についてお知らせします。

 離婚時の年金分割が可能に

離婚時に、厚生年金の保険料納付記録を分割できる制度が導入されました。会社員の夫と専業主婦が熟年離婚するケースでは、従来は、妻が受け取れるのは自分の国民年金(基礎年金)のみで、厚生年金(報酬比例部分)はすべて夫に支給されるため、老後の年金額に大きな差がついていました。

平成19年4月以降に成立した離婚の場合は、当事者間の同意または裁判所の決定があれば、婚姻期間の保険料納付記録を分割することができます。

平成19年4月1日以降に成立した離婚が対象。
結婚してから離婚するまでの期間の厚生年金保険料納付記録を分割(独身期間は対象外)。
分割できるのは50%まで。夫婦ともに厚生年金加入期間がある場合は、双方の合計の50%の範囲内で分割。
年金分割を請求できるのは離婚後2年以内。


基金の対応
基本のプラスアルファ部分と加算部分については分割を行いません。



 70歳以上にも在職老齢年金制度を適用

 対 象 者  昭和12年4月2日以降生まれの人

70歳以上で年金を受給しながら働いている人は、65〜69歳の在職老齢年金と同じしくみで年金が減額されるようになりました。なお、厚生年金保険料の負担はありません。

70歳以上で働いている人の年金
  従 来
老齢厚生年金 ●全額受給
老齢基礎年金 ●全額受給
厚生年金保険料 ●負担しない
平成19年4月から
●賃金と年金月額の合計に応じた額を減額
●全額受給
●負担しない

老齢厚生年金の給付調整のしくみ
賃金(ボーナス込みの月収)と厚生年金月額の合計が48万円を超えるときは、超えた分の1/2が支給停止されます。
老齢基礎年金は含めずに計算します。
基金の対応
70歳以上の給付調整は実施しません。



 65歳以降の老齢厚生年金の繰下げが可能に

 対 象 者  平成19年4月1日以降に老齢厚生年金の受給権が発生した人

 老齢厚生年金の受給権を得た後、支給の申請をしないで1年以上過ぎた人は、老齢厚生年金の繰り下げ制度を申請すると、66歳以降に年金の支給開始を遅らせることができます。

支給開始を遅らせると、1カ月につき0.7%増額される。70歳まで繰り下げると42%増。
在職老齢年金制度による支給停止部分は繰り下げの対象外。もしも裁定請求していたら受給したであろう年金額に、増額率を掛けて算出。
60〜64歳の特別支給の老齢厚生年金に繰り下げ制度はない。
老齢基礎年金も一緒に繰り下げる必要はない。
老齢厚生年金を70歳まで繰り下げる場合のイメージ
基金の対応

国の老齢厚生年金を繰下げた場合は同様に繰下げをし、その分増額します。



 遺族年金の見直し

 65歳以降の支給方法の変更

65歳以降の遺族配偶者に対する年金は、自分自身の老齢厚生年金がまず全額支給され、さらに改正前の遺族厚生年金額との差額を遺族厚生年金として支給するしくみに変更されます。実際に受け取る金額には変更はありません。

死亡前の夫の老齢厚生年金12万円、妻の老齢厚生年金4万円のケース


 子どものいない30歳未満の妻が受給する遺族厚生年金は5年まで

遺族厚生年金は、受給者が再婚した場合以外は生涯支給されています。平成19年4月からは、30歳未満で子どものいない妻への遺族厚生年金の支給期間は、5年までとなります。
従 来
遺族配偶者の年齢・子の有無を問わず生涯支給

平成19年
4月から
夫死亡時、30歳未満で子どもがいない妻には5年間まで支給
子ども…18歳の年度末までの子。または20歳未満の1級・2級障害のある子。

 中高齢寡婦加算は夫死亡時「35歳以上」から「40歳以上」に

夫死亡時に子どものいない35歳以上の妻には、40歳〜65歳までの期間「中高齢寡婦加算」(年額59万4200円)が支給されています。これが平成19年4月からは対象年齢が引き上げられ、「40歳以上」に変更されます。
従 来
夫死亡時、妻35歳以上
子どもがいない場合に支給

平成19年
4月から
夫死亡時、妻40歳以上
子どもがいない場合に支給
子ども…18歳の年度末までの子。または20歳未満の1級・2級障害のある子。